お世話になります。
の高橋です。
わたしたちは作成したシステムの説明のために
画面キャプチャと操作概要の資料を作り、お客様へ提示します。
これは各SEに義務付けられた任務として、
システム開発手順の一環に組み込んでいます。
(わたしたちが作るのはあくまでマニュアル「的」なもので
別途費用不要程度の簡素なものなのですが
本稿では便宜的にマニュアルと呼ぶことにします。)
わたしたちがなぜマニュアルを作成するのか?
結論としては「マニュアルを作る過程でシステム品質が向上するから」です。
以下に詳細を述べます。
システムの作成時、多くの企業が
操作マニュアルの作成をソフト会社へ依頼します。
画面のキャプチャを貼り付け操作手順を丁寧に説明した、
数十ページにも及ぶ立派な資料です。
システムの導入後、同じく多くの企業が
注文したはずのマニュアルの存在を忘れます。
慣れた操作は身体が覚えていますし
不明点は誰かに聞くのが早いですし
また、運用が浸透するほどそのルールが緻密・厳密になるため、
困ったときほど頼りにならないのがマニュアル、となります。
とは言え情報量が多いので新人研修にも使いにくい、
これがマニュアルの「あるある」と言えるでしょう。
一方、システムに小さな機能追加や画面変更があるたびに
マニュアルにも修正の必要が発生します。
更新しなければマニュアルと実際の画面が食い違うことになるためです。
しかし図書管理費は安くありませんし、
かつ、これは「誰も使わない」予算使途となります。
では最初からマニュアルなど作らない方が賢明なのでしょうか?
実際、多くのシステム会社は「マニュアルは費用対効果が悪い」と言います。
わたしたちも、そう言われることは当然把握しています。
しかし、それでも、わたしたちはマニュアルを作り続けます。
その理由は単純で
「マニュアルを作るとシステムそのものの品質が劇的に向上するから」
となります。
画面キャプチャを撮り操作手順を文章にする作業は、
SEに「ユーザー目線」を強制します。
自分が設計した画面を改めて眺め、説明文を書こうとすると、
機能配置の不自然さや、分かりにくい項目名が目につくのです。
SEが「この機能の説明がしづらい、わかりにくい」と感じた瞬間
それは改善のチャンスとなります。
マニュアル提示前なら、まだ修正コストは低く抑えられます。
わたしたちは、マニュアルの真価を
「読んでもらうこと」ではなく「作るその過程」に感じています。
開発の最終段階で操作を言語化する行為そのものが、
システムの使いやすさを低コストで検証する最後の砦なのです。
もちろん、棚卸や決算など、たまに使う機能の確認に
マニュアルの存在は役に立つでしょう。
ただし、その頻度はせいぜい年1回です。
半年や月に1回以上の頻度があるなら自然と覚えてしまいます。
わたしたちは、マニュアルを「納品物」ではなく
「品質検査の道具」として位置づけ、各SEにその作成を義務付けています。
そのため、わたしたちはシステムの開発時に
お客様に図書管理費を請求することはありません。
また、わたしたちは、豪華で完全なものではなく、
画面キャプチャと操作概要を示す程度の簡易版マニュアルを作成します。
これでコストを抑えつつ、品質向上という本来の目的が果たせます。
この考え方こそが、中小企業のシステム運用を現実的に支える知恵なのです。
御社でも何かしらのマニュアルを作成する折に
上記参考となりましたら幸いです。
本日もお疲れさまでした。
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